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新興経済諸国にドルのまま投資できるケースは少ないため、このとき大量のドルが外貨に両替されることになる。
結果、アメリカの為替レートはドル安に向かうわけだ。
FRBが金利を下げ、ドルキャリートレードが増えると、当然ながら市場は、「ドルは今後も安くなる」と考える。
そうなると、金融機関は返済時のことを考慮し、ますますアメリカでドルを借り、海外に投資するようになる。
返済時にはドルは現時点よりも安くなっているはずなので、ドルキャリートレードはアメリカと投資国との金利差のみならず、為替差益という果実をも産み出してくれる可能性があるのである。
すなわち「ドルキャリートレード増加。
ドルキャリートレード増加」という循環が発生するわけだ。
07年までの円キャリ.-トレードは、まさにこのパターンを辿った。
「国民経済」のために使われるべきマネーは海外に向かうドルや円に限らず、キャリートレードは金融機関に高収益をもたらす。
何しろ、金利差と為替差益で「二重に儲ける」ことが可能な仕組みなのである(ただし、金利や為替が思惑と逆に動いてしまうと、二重に損することになる)。
09年11月には、ウォール街のボーナスが平均で対前年比4割も増加する見通しとの調査結果が発表され、アメリカ国民や世界を唖然とさせた。
ご存知の通り、リーマン・ショック以降のウォール街は、アメリカ政府から公的資金の注入など。
(大きすぎて潰せない)のコンセプトに基づく支援を受けてきたのである。
アメリカの地方銀行が09年だけで3ケタも破綻する状況において、政府の手厚い援助を受けたウォール街のみが高額報酬に沸きかえっているわけだから、アメリカ国民としてはたまらないだろう。
別に、筆者は社会主義者でも何でもないので、「アメリカ国民が困窮する中、高報酬を謳歌するウォール街はけしからん!」などと、感情論に基づいて批判したいわけではない。
とはいえ、そもそも09年の♂3ウォール街に高収益をもたらした「原資」は、アメリカ政府が「アメリカ国民のために」供給した「国民のお金」なのである。
政府が国内経済回復のために採用したゼロ金利政策や量的媛和の影響で、アメリカの金融市場にはドルがジャブジャブに溢れている。
その超低金利(いまや事実上の世界最低)のドルを借り受け、「海外投資」で儲けたウォール街の金融機関に、反感を持つなという方が無理だろう。
もちろん、ウォール街の金融機関は法を犯しているわけではないし、アメリは保護主義政策を採っているわけでもない。
むしろ、金融のグローバル化も世界一進んでいる。
アメリカ政府が国民のために採用した「超」金融媛和政策を活用し、ウォール街などの金融機関が「海外で」大いに稼いでも、法的には問題視することができない。
グローバリズムの擁護者として名高い経済学者、ジャグディシユ・バグワティ教授は、確かに自由貿易の熱烈な支持者である。
しかし、そんなバグワティ教授でさえ、「貿易の自由化と金融の自由化との間には、一線を引くべきである」という議論を展開している。
バグワティ教授は実証研究の結果、「自由な資本移動が大きな利益をもたらすことを示す証拠はない」と、断定している(逆に、自由貿易が経済的な利益をもたらすことは確実であるとも主張している)。
金融のグローバル化により、マネーが自由自在に世界を駆け巡るようになった現在、グローバル化前よりも、かえって様々な種類の弊害や危機が生じているというのが現実だ。
今回のサブプライム危機や、リーマン・ショックに前後したCDS(クレジットデリバティブの一種)の危機などが典型である。
無論、現在のアメリカのように本来は「国民経済」のために使われるべきマネーが、海外に向かってしまうというのも大きな問題の一つだ。
実は、バブル崩壊後の日本の銀行は、投資行動が超コンサバティプになってしまい、02年以降の世界同時バブルの中においても、海外の金融機関と比べて高収益を上げることができないでいた。
英国ベルギールクセンブルクアイルランド日本ドイツオランダフランスカナダノルウェーアメリカアイスランドアイルランド及びスイスのデータのみ2006年版図1-13は、07年における主要国の金融機関のROE(株主持分利益率)とROA(総資産利益率)、そしてレバレッジ倍率を表にまとめたものだ。
日本の金融機関はレバレッジ倍率がトップクラスにもかかわらず、の銀行などが手元に負債(我々の預金など)が日々積み上がっていく中、高収益の商品に投資ができなかったことを示唆している。
とはいえ、大切な我々の預金をハイリスク・ハイリターンな(例‥サブプライムローンを含んだ証券化商品など)の商品に投資された方がマシだったかといえば、もちろんそんなことはないだろう。
実際に、一部の国内β首銀行や農林中金などが、海外の証券化商品に手を出した結果、数千億円規模の評価損計上に追い込まれてしまった(これでも欧米の金融機関に比べれば、「かすり傷」と呼んでも構わないほどの損失規模なのだが)。
07年まで継続した円キャリートレードの主役は、日本国内ではなく海外の金融機関なのだ。
海外の金融機関が円キャリートレードや証券化商品への投資でROEを高めていく中、日本勢が何をしていたかといえば、ずばり日本国債(及び米国債)への投資である。
現在、日本国債の金利は世界最低である。
超低利回りの国債を中心に投資をせざるを得なかったからこそ、日本の金融機関のROEやROAは極端に低く、日本の金融機関がこぞって国債投資に走ったからこそ、日本国債の金利は世界最低というわけだ。
確かに寂しい話ではあるが、下手に海外投資にマネーが回り、国が傾くほどの評価損を計上させられるよりは、はるかにマシだったのではないだろうか。
何しろ、β7銀行などが日本国債を購入した場合、その多くは日本国内における政府の景気対策に使われるのだ。
銀行のお金といっても、元をただせば我々一般の日本国民や日本企業のお金である。
それが海外ではなく国内に(政府経由で)向かったのは、まさしく不幸中の幸いだったといえないだろうか。
バブル崩壊後に日本の銀行が投資態度を萎縮してくれたことに対しては、皮肉抜きで心から感謝したい。
日本の銀行までもが欧州諸国などの真似をし、高利回りの証券化商品への投資に邁進してしまっていたら、確かにROEは高まっただろうが、今頃、金融システムが機能不全状態に陥っていた可能性さえある。
日本と比較すると、現在のアメリカやウォール街の状況が、いかに救いがないかが分かるだろう。
繰り返しになるが、FRBがゼロ金利政策を採用し、国債購入などの量的緩和策を推進したのは、アメリカ国内経済を回復させるためなのである。
そのお金が海外に流れ、ウォール街のみが潤うのでは、当局としては立つ瀬がないだろう。
年が明けた10年1月。
アメリカ国民などからの批判を受け、ついにはオバマ大統領までもが、「銀行のボーナスは常識はずれ」と指摘するに至り、さすがのウォール街も09年のボーナス枠縮小に乗り出すとの報道がブルームハーグから流れた。
とはいえ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、モルガン・チェースなどのボーナス支給額は、相変わらず対前年比で5割近い増加になっている。
同記事において、報酬コンサルティング会社ジェームズ・F・レグ・アンド・アソシエーツのシニアコンサルタントであるデービッド・シュミット氏は、「金融各社は、誰もがこの間題を注視しているのを承知しており、反応がどういったものになるか分かっていると思う。

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